ノートパソコン



ノートパソコン(ノート型パーソナルコンピュータ、ノートPCLaptop, laptop computer, notebook computer, notepad computer, etc)は、モニタなどの表示画面、キーボードポインティングデバイスなどの入力装置、バッテリー電池)などがコンピュータ本体と一体化された、ユーザーが任意の場所へ移動させて利用する(持ち運ぶ)ことを前提として設計された、二つ折りで軽量のパーソナルコンピュータの総称である。

概要

ノートパソコンは、主にパーソナルコンピュータ(いわゆる「パソコン」)の機能をオールインワンとし、携帯性や運搬性を重視したものであるが、その当初は後述するように持ち歩くのにもそれなりの腕力を必要とするものであった。後に様々な技術の進歩を取り入れる形で小型化・軽量化(ダウンサイジング)が進んでいる。
古くは小型高密度化でそれ相応の製造コストが掛かることから、デスクトップパソコンと比して販売価格が割高となる傾向は避けえず、またオールインワンタイプの宿命として拡張性も限定的、かつモジュールも専用部品を使うことから、デスクトップ機のように部品交換で機能を向上させたりすることにも、それらが高価であるとかそもそも部品交換に対応していないなど、困難が付きまとった。そのため、ユーザーにあってはマシンパワー(計算能力や記憶容量)が必要な処理はデスクトップ機で、持ち歩きが必要な場所ではノートパソコンで…という使い分けをし、その意味でノートパソコンはサブ機的な位置付けが長らく続いていた。
しかし2000年代には多くのユーザーにとってデスクトップパソコンが過剰性能気味となった一方、ノートパソコンの価格も下がり、内部拡張のニーズも減少していった。こうした経緯により、一般のユーザーにも、ノートパソコンがメインのパソコンとして受け入れられるようになっている。
ノートパソコンの製造には、電子部品の小型・低消費電力化や、機械的構造(剛性・衝撃や圧迫に対する強度・対水ぬれ性など)の高度な設計など総合的な技術が求められることから、長い間日本のお家芸であった。しかし1998年頃から、大型の機種の生産を台湾や中国などに移管するメーカーや、現地企業に設計・生産を委託し独自の設計・製造からは撤退するメーカーなども相次いだ。現在日本国内で生産しているのは直販メーカーが中心で、国内市場向けに迅速な対応が求められるBTOによる組み立てが行われている。
近年では電子部品の高性能、高密度化や、部品実装技術の向上、素材の性能向上などの発展により小型化、軽量化が進み、演算性能も飛躍的に向上している。また、バッテリーの性能向上もノートパソコンの発展に大きく貢献している。様々な機能がモジュールの形で実装しやすくなっているなどの事情もあり、後述するように多機能化も依然進行中である。

市場の動向

日本では住宅事情などにより、2000年以降ノートパソコンがパソコン市場の主流となっており、自社パソコンのラインアップをノート型のみとするメーカーも存在する。また従来はコストパフォーマンス重視でデスクトップパソコンが主流であったアメリカ合衆国やヨーロッパでも、価格や利便性のみならず、省電力=地球環境への配慮という観点からもノートパソコンによるデスクトップパソコンの置き換えが進んでいる。
こういったノートパソコン普及の一端には、「メインとして使うのに必要十分な性能」がデスクトップ機と比してもそれほど割高ではない価格で実現できるようになってきているためである。ノートパソコンを選択することは、企業において省エネ・省スペースもさることながら、外出・出張先に普段使っている環境を持っていって作業できる利点もある。この安価な省スペースパソコンという需要では、いわゆる省スペースパソコン(デスクトップ機)という選択肢もあり、ノート型パソコンが小型化の一方で犠牲にせざるを得ない「大画面」や「入力しやすい(フル)キーボード」や「扱いやすいポインティングデバイス」などを使うために、あえてノートパソコンではなく省スペースパソコンを選ぶ視点も存在する。
なお、2009年には後述するネットブックに代表される低価格サブノートパソコンに牽引される形でノートパソコン全体の価格が下がり、全世界で販売されているパソコンの50%以上をノート形パソコンが占めるまでになっている。ただし低価格なネットブックに関しては2010年にも人気にかげりも現れ、パソコン全体の市場拡大が見込まれる中で、成長率を低めにとる見通しである。

名称

「ノートパソコン」との呼称は主に和製英語であり、世界的には主にラップトップ(LaptopLaptop computer)と呼ばれるカテゴリ(の一部)である。しかし日本では「ラップトップパソコン」より小型軽量なパソコンを指して、あるいはラップトップに相当する製品を全てノートパソコンと呼ぶ。現在の日本ではラップトップという呼称はほぼ廃れ、大型のデスクノートも含め、2つ折り式のポータブルコンピュータを全てノートパソコンと呼んでいる。
なお、1989年に日本でこの分野のパソコンが登場した当時は呼称が統一されておらず、マスメディアやパソコン雑誌でも当初は「ブック型パソコン」、「ブックパソコン」などの呼称が多かったが、エプソン(現・セイコーエプソン)が286NOTE、NECが98NOTEをそれぞれ「ノート型パソコン」として売り出したことから、「ノートパソコン」の名が一般的になった。

歴史[編集]

ノートパソコン以前

1980年代のはじめ、最初期のポータブルパソコンは、トランクやスーツケース大の筐体にCRTや補助記憶装置を詰め込み、何とか持ち運びが可能な状態に組み上げた製品であった。オズボーン・コンピュータのオズボーン1や、コンパックのCompaq Portableなどがそのルーツである。
後にA4サイズ程度の持ち運べるコンピュータが開発され、ハンドヘルドコンピュータと呼ばれた。フルキーボードと小さな液晶ディスプレイを備え、バッテリー駆動が可能であった。マイクロカセットやプリンタなどの入出力機器を搭載したものもあったが、基本的にはデスクトップタイプのパソコンとは互換性のない、別個の商品として扱われていた。
1980年代中期には、デスクトップタイプのパソコンと互換性を保ちながら、持ち運んでの利用を可能にしたパソコンが開発された。二つ折りにすることで、フルキーボードと大画面を両立させ、折り畳んだ状態で持ち運ぶハンドルを備えていた。 椅子に座ったひざの上で操作できるという意味で、「ラップトップパソコン」(英語:Laptop Computer)と呼ばれたが、高重量の製品が多く、中には10kgを超える製品も有ったため、ラップクラッシャー(膝壊し)などと揶揄されることもあった[

ノートパソコン(ノートPC)の誕生

そんな中、A4ノートサイズ、2.7kgと軽量で、最小限のインターフェースを装備しながら、大型の液晶ディスプレイを備え、デスクトップタイプのパソコンと互換性を保持した製品として、1989年6月27日発表、同年7月に東芝から発売されたDynaBook現・dynabook) J-3100SSは、19万8,000円という価格で衝撃を与えた。発表こそ エプソンのPC-286NOTE executive が先んじていたものの(1989年6月7日発表、同年9月発売、重さ 2.2kg、45万8,000円)、価格的には競合にならなかった。これらは、1989年10月には NEC より発売された PC-9801n とともに、「ノートパソコン」、通称「ノートPC」という新たな市場を切り開いた。
1991年にはアップルコンピュータがPowerBookシリーズの発売を開始、キーボードの手前にパームレストとポインティングデバイス(当時はトラックボール)を配置するという現在のノートパソコンのデザインの原型となった。ThinkPad(IBM/Lenovo)は独自のトラックポイントを採用している。
1990年初頭の日本ではアップルのPowerBookシリーズは、通称「ラップトップ」と称されたのに対して、NEC等の国内ノートパソコンは「ノートPC」と呼ばれ、区別された。

現在のノートパソコン

現在では、タッチパッドやポインティング・スティックといったポインティングデバイス、イーサネットや無線LANといったネットワーク機能はどのノートパソコンにも必ず搭載される機能になった。液晶ディスプレイは大画面化・カラー化され、Bluetoothをはじめとしたワイヤレス接続機能は著しい発展をとげ、プロセッサの処理速度や搭載メモリ容量なども大幅に向上している。これによりデスクトップ型パソコンの補助ではなく、最初に購入するパソコン、さらにメインマシンとして使用されることが一般的となっている。製品によってはプレゼンテーション向けにプロジェクタやテレビ画面出力を考慮した設計として、D-Sub15ピン端子やHDMI端子を備えている。また、個人の娯楽向けにBlu-ray Disc、DVDなどの光学ドライブやデジタル放送受信機器なども内蔵しており、持ち歩く映像機器としての側面も強くなっている。映像出力に関する機能は主に大学や企業など大勢に向けて情報を提供する用途に対して多用される。
またUSBはそれ以前のノートパソコンが苦手とした拡張性を補って余りある接続性を提供しており、外部記憶装置や各種入出力機器・ユーザーインターフェイスデバイス・拡張機能を提供する周辺機器は多く、前述のBluetoothによる外部機器接続の利便性とあわせて、様々にユーザーに利用されている。

構造

構造としては、基本的にパーソナルコンピュータの機能を備える以上は、このコンピュータ・アーキテクチャを踏襲したものになっているが、オールインワン機種として、表示装置や演算装置・外部記憶装置・入力装置(ユーザーインターフェイス)などを一通り内蔵している。また、携帯に際して電源を得られない場所でも使用するために電源(バッテリー)を内蔵しており、内蔵電源と外部電源を利用できるようになっている。
パーソナルコンピュータ自身が汎用の製品であるため、製品によっては特定のユーザー群の利便性を向上させるべく何らかの機能を付加したものがある一方で、基本機能だけでまとめられ、ユーザーが用途に応じて拡張機能をオプションで追加することを前提とする製品も少なくない。こと小型化・携帯性を求める機種では、光学ドライブなどかさ張る機能は外部接続で利用するよう設計されている。

表示装置

軽量化およびバッテリー動作のため、表示装置には主に液晶ディスプレイが使われており、基本的に本体部分との二つ折り形状となっているが、画面部分を回転させ画面を表にして折りたたむことでタブレットPCのように利用できるタイプも存在する。画面の大きさはデスクトップパソコンと同様に対角で「○○インチ」(販売店などでは○○と表記)で表される。以前はアスペクト比(長辺:短辺)は「4:3」が主流であったが、2000年代半ば頃から「5:4」、「16:10」、「16:9」のいわゆるワイドが主流となっている。初期の頃は小型化や技術的なものやコストの問題もあってモノクロ画面を採用した製品もあったほか、16色や256色表示(色深度4ビットや8ビット)など色彩表示が限定的なものもあったが、現在はほぼ例外なくデスクトップ機と比べても遜色がないカラー表示が可能となっている。
液晶ディスプレイに関しては、当初は白黒液晶に始まり、カラー化の途上で比較的安価なDSTN液晶を採用した製品も普及したが、現在はほぼ全数がTFT液晶となっている。バックライトについては近年に至るまで冷陰極管(極細の蛍光管)が用いられているが、2008年第4四半期からLEDバックライト(エッジライト式)が登場している。

筐体

筐体の大きさについてはノートパソコンを閉じたときの状態で紙の寸法のA列およびB列になぞらえてカテゴライズされている。また、紙の寸法より一回り大きい「ファイルサイズ」という表現も用いられる。ただ、前述の通り画面アスペクト比がワイドのものでは、横に細長い製品も登場している。
スリムノート(英文のレビューなどでは Slim より Thin が使われている)と呼称されるノートパソコンについては、特定の大きさのカテゴリーに属するノートパソコンよりも比較的厚みが薄いものを指す。

電源

電源は基本的に内蔵電源としてのバッテリーと、外部電源(商用電源など)を直接利用したりバッテリーを充電するためのACアダプタを利用する。大型の機種や過去のものには外部電源を利用するための変圧器や整流器を内蔵した製品もあったが、現在では本体の小型軽量化を妨げる要素として、小型機種を中心に外部にACアダプターを接続する形態が主流である。バッテリーに関しては技術革新が著しいものの、コンピュータとしての他の箇所の高性能化は消費電力を増大させる傾向もあり、また実用的な稼働時間と携帯性の間で、メーカー側はバランスに苦慮している。
ノートパソコン以外にも言えることだが、二次電池は充放電サイクルを繰り返すにつれて有効容量が減少するという問題を抱えており、経年劣化したバッテリーは交換を必要とする場合もある。なお、頻繁に充放電を繰り返したり過放電するなど利用条件次第でバッテリは保証期間内であっても容量が低下する場合もあることから、メーカーでは消耗部品扱いで保証対象外とする場合がほとんどである。
ノートパソコンに付属するACアダプターは、外部電源による動作および内蔵バッテリーの充電のために使用するが、ノートパソコンが携帯される機器として、販売されている(購入した)地域を離れた海外旅行や海外出張にも持ち出される場合もあることから、世界各国の電源事情に対応、電圧や交流周波数の違い(100~240ボルト、50/60ヘルツ)を自動的にノートパソコンの機能に即した電圧で直流の電流に変換できるよう設計された製品も見られ、またコンセント形状も様々な規格が存在し国・地域によってまちまちであることから、プラグ変換で対応する製品も見出せる。このほか、乗用車のアクセサリーソケットを利用できるアダプターなど、様々な製品も見られる。
また、半導体製品の低電圧化が進む現在でも消費電力の高いCPUや液晶パネル(特にバックライト)、各種ドライブなどを使用していることもバッテリーの小型化を阻害している要因である。古くは乾電池で駆動するものやThinkPad 220のように必要に応じてバッテリーと電池ボックスを入れ替えて利用できるノートパソコンも存在したが、パソコンの性能が上がり、消費電力の増大した現在ではノートパソコンを実用的に駆動するのは難しいため、現行のノートパソコンでは(マニアの改造を別にすれば)乾電池駆動の製品は見られない。そのため、外部に持ち出して長時間駆動するにはACアダプターも持参し電源を確保する必要性が出る。一部のメーカーでは充電式電池に代わって、アルコール(メタノール)を補給して電力を発生させる燃料電池の開発を進めているが、まだまだ技術革新の必要性が高い製品といえる。
なお、公共の施設でACアダプターを使用すると電気窃盗(盗電)になる虞がある。その一方で、ノートパソコンを含む様々な電子機器としての携帯機器が一般に普及した結果として、日本においては一部の新幹線(東海道・山陽のN700系、東北のE5系)や特急列車(主に2009年以降に製造されたJRや私鉄の車両)、ファミリーレストランやファストフード店など、客席にノートパソコンや携帯電話の充電用のコンセントを備えた施設も増えるなどしている。
またバッテリーは携帯時の電源だけでなく、急な停電の際の無停電電源装置としても機能する。

ソース:ウィキペディア

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